【オウリー通信】米国で注目集めるDNVBの取り組み!

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顧客体験向上は、Grove Guidesのように購入前から購入後のコミュニケーションで、タイミング良く必要とされる情報やサービスの提供が重要みたい!

 2017年頃から、アメリカでは実店舗を主体とする小売事業者は、AmazonをはじめとするEコマース事業者との競合激化や変化する顧客ニーズへの対応できず苦戦していることから「小売の終焉」が囁かれ、昨年は 1,2000店舗以上が閉鎖に追い込まれました。このように小売が苦戦する傍らで、アメリカではオンライン専業ブランドのDNVB(Digitally Native Vertical Brands)が急成長を遂げていることで注目を集めています。今回は、DNVBと従来型ブランドや小売との違いやその取り組みについて紹介します。

◎急成長を遂げるDNVBの特徴は、顧客体験向上を中核に据えたビジネスの構築!

 米ネット広告業界団体Interactive Advertising Bureau(IAB)によると、DNVBは自ら企画や製造した商品をオンラインで販売するブランドのことを指します。これらブランドは、ライトアセットで製造ラインを持たずに商品の開発・製造を行い直販することで、高品質低価格の商品提供を実現してきました。同団体によると、2018年の売上上位DNVBとしては"Stitch Fix"、"Grove Collaborative"、"FabFitFun"、"Loot Crate"、"The Honest Company"などをあげています。各社の取り組みを見ていくと、その内容は様々で必ずしも自社ブランドを取り扱っていないベンダーも登場しています。ただし、共通している点としては、従来型ブランドや小売とは異なり、顧客体験向上を中核に据えたビジネスを構築していることがあげられ、直接顧客と関係性を持ち、継続的なコミュニケーションをとり、顧客ニーズへの理解を重要視しています。IABの発表した"2019 IAB 250 Direct Brands to Watch Methodology"によると、DNVBは 2010年頃より登場し始め、アメリカで現在 250ブランド存在しているそうです。また、米業界紙"DigitalCommerce360" によると、アメリカのEリテーラー売上上位 500社のなかで、すでに DNVBのベンダーが 31社ランクインしています。これら企業の2018年平均成長率は 23.3% (Top 1000 全体平均は 17.6%)となっており、DNVBが急成長を遂げていることがわかります。

 ちなみに、DNVBという言葉を提唱したのは男性向けアパレルBonobos(現在Walmart傘下)の創業者 Andy Dunn氏です。Bonobosでは、オンライン購入のハードルを下げるため、顧客満足度向上を最優先項目とし、マーケティング費用のほとんどをカスタマーサービスに投じ、配送料無料や返品期限を設けないなど、サポートサービスを充実させてきました。そのサービスはオンラインに留まらずリアルでも開始し、2011年に商品を試着しその場でECサイトで注文する店舗「Guide Shop」を展開し始め、現在、アメリカに約 60店舗を構えています。店舗訪問客の一回当たりの購入金額はオンラインと比較して平均 2倍多く、訪れた顧客の返品率も低く、リピーターにもなりやすい傾向にあるそうです。

引用:Bonobos

BonobosのEコマースサイトとGuide Shopのイメージ

Bonobos-Top.png GS-Image.jpg

 では、その他のDNVBはどのような方法で顧客体験最大化に取り組んでいるのでしょうか?ここでは、先ほどご紹介した売上上位 5ブランドの取り組みについてご紹介します。

◎Stitch Fix、3,900名のスタイリストと人工知能活用で、会員一人ひとりにあったコーディネートを提案

 Stitch Fixは、2011年に創業したサブスクリプション型ファッションコーディネートサービスえお提供しています。同社では「一人ひとりにあったファッションスタイルの提案」をコンセプトとしています。アクティブ会員 270万人にコーディネートを提案する上で、まず自社開発の人工知能を用いて体型やファッションの好みに基づいて商品候補を絞り込みます。次に約 3,900名のスタイリストが、そのなかから毎月コーディネートを提案します。会員は商品を気に入れば購入し、必要なければその理由を記載し返品します。次回以降、スタイリストは返品理由を参考に商品を選び、より会員の好みに沿ったコーディネートを提案しています。

 このように「ヒトと人工知能」の組み合わせで、オンラインでありながら店舗と同様にコーディネートや商品の着回しを提案し、顧客が普段手に取らないような商品との出会いも提供することが特徴となっています。また、顧客からのフィードバックに基づいて、ファッションの好みの理解を深めながら商品提案力を磨き上げることに注力していることもポイントとなっています。

引用:Stitch Fix

Stitch FixのEコマースサイトイメージ

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◎Grove Collaborative、顧客ひとり一人に選任のサポートチームをアサイン

 Grove Collaborativeは、2014年に創業したサブスクリプションサービスベンダーです。同社では「人にとっても地球にとってもやさしい商品を販売すること」をコンセプトとしており、オーガニック石鹸ブランド「 Dr. Bronner's」やハチミツのスキンケア製品「 Burt's Bees」など、消費財を中心に70以上のオーガニックブランドとプライベートブランドを販売しています。

 顧客体験向上の取り組みとして、オンラインでも実店舗の接客と同レベルのきめ細やかなサポートを提供することに注力しています。そのため顧客ひとり一人に専任のカスタマーサポートチーム"Grove Guides"をアサインし、一般的なオンラインショッピングにおけるトラブルや問い合わせ対応に加え、商品知識に長けたチームが、顧客の買い物の際の商品選び、また、購入後も使い方のアドバイスを提供します。これにより、特に初めてオーガニック商品を購入する顧客であっても、安心して商品を使うことができるようにフォローしています。

引用:Grove Collaborative

Grove CollaborativeのEコマースサイトイメージ

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◎FabFitFun、1,500名 のインフルエンサーが商品情報について配信

 FabFitFunは、2010年に創業したライフスタイル系のサブスクリプションサービスベンダーです。会員には自社ブランドに加え大手ブランドの商品がキュレーションされて届けられます。

 元々メディアであったため約 100万人の会員の様々なニーズに適したコンテンツ提供に注力しています。一日当たり 5 - 10本のコンテンツを配信するほか、毎シーズン約 1,500名のインフルエンサーを採用し、商品レビューの提供にも注力しています。その中にはKhloe Kardashian氏をはじめとするセレブに加え、10万人ほどのフォロワーを持つインフルエンサー 約 500 - 750名も含まれます。FabFitFunでは、インフルエンサーの情報発信力を活用することで、新規会員獲得のためのプロモーションを行うほか、既存会員にとって初めて手に取る商品が届いても、使い方に困らないように取り組んでいます。

引用:FabFitFun

FabFitFunのEコマースサイトイメージ

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◎LootCrate、オンライン上でのファンコミュニティ構築でファン同士の交流の場を提供

 Loot Crateは、2012年創業のゲーム、アニメ、テレビ番組、スポーツチームなどテーマ特化型のサブスクリプションコマースです。Disneyやサンリオなどキャラクターや映画の版権を持つ事業者と直接提携し、約44種類(ゲーム・アニメ系24種類、スポーツ系20種類)の商品を34ヵ国向けに販売しています。

 同社では、なによりもファンマーケティングを重視しています。そのためファンコミュニティーの開設や、ファンがボックスを開封する「Unboxing」の様子をソーシャルメディア上で共有することを推奨し、好きなことについて話し合う楽しみを共有できるようにしています。同社によると、この「Unoboxing」動画はファンの間でも好評で、同社の公式ブログで取り上げてもらうことがひとつのステータスにもなっているそうです。

引用:Loot Crate

Loot CrateのEコマースサイトイメージ

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◎The Honest Company、インフルエンサー活用で商品の品質を伝えることでミレニアル世代の囲い込みに注力!

 The Honest Companyは、2012年に創業されたベビー・マタニティ関連商品のサブスクリプションコマースです。創業者でもある女優のJessica Alba氏が、自分のこどもが一般的に安全といわれる商品でアレルギー反応を見せたことから「こどもが安全に使える商品」をコンセプトとして立ち上げました。

 同社ではミレニアル世代をターゲットとしており、ソーシャルメディア活用を進め、特に、顧客体験向上のためにインフルエンサーマーケティングに注力しています。その一環として、アンバサダー・アフィリエイトプログラムを立ち上げ、参加する顧客やママさんインフルエンサーに対して、限定コンテンツの提供、新商品への先行アクセス権、ソーシャルメディア投稿に活用できるコンテンツなども無償で提供しています。インフルエンサーや顧客が消費者目線で商品の特徴や使いやすさを伝えることにより、顧客が商品を使用する上での不安解消に繋げています。

引用:The Honest Company

The Honest CompanyのEコマースサイトイメージ

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 DNVBは顧客体験を向上させる上で、人工知能といったテクノロジー活用やインフルエンサーマーケティングなどの新しいアイディアにいち早く取り組んできました。また、最近ではテクノロジー以外にもサブスクリプションコマースのビジネスモデルを取り入れるなど様々な取り組みも見られています。また、顧客にサービスを継続利用してもらうため、購買前だけはなく購買後の顧客とコミュニケーションを重視しおり、例えばGrove CollaborativeやFabFitFunでは、購入前のサポートに加え、購入した商品のおすすめの使い方について顧客に伝えることに注力しています。

 素晴らしい顧客体験を提供するためには、購入前から後までの継続的なコミュニケーションを通じて、顧客が必要とする情報やサービスをタイミングよく提供することが重要と考えられます。今回はDNVBのオンラインでの取り組みを取り上げましたが、最近ではBonobosのようにリアルへの投資も積極的に行う傾向がみられます。今後、こうしたリアル店舗での取り組みについてもご紹介したいと思います。

(Ms Everyday Holiday)

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