トランスコスモスでは、アジアにおけるオンラインショッピングの利用実態と越境ECへの関心を探ることを目的として「アジア 10都市オンラインショッピング利用調査 2020」を実施しました。この調査は、東京を含むアジア 10都市におけるオンラインショッピング利用者 3,200人(各320人)を対象とし、都市の特徴やアジアに共通する傾向を明らかにしています。3年目となる今年のテーマは「カスタマー・エクスペリエンス」です。各都市におけるオンラインショッピングの"残念な体験"と"嬉しい体験"について調べました。また、毎年定点で調査している項目の中から、特に興味深い結果が得られたものをいくつか紹介したいと思います。
【注目ポイント】
- もう利用したくないという「残念な体験」の多くは商品写真への配慮不足が招いています。「届いた商品が写真と大幅に違った」との回答がハノイ(58%)、クアラルンプール(55%)、ジャカルタ(54%)などの都市で最も多くなりました。また「サイトの画像が小さく商品詳細がわかりにくかった」もほとんどの都市で上位に並んでいます。
- 一方、また利用したくなる「嬉しい体験」では、「梱包が丁寧だった」が東京(32%)と上海(43%)ではトップ、それ以外の8都市では「有料配送のはずが送料無料で購入できた」がいずれも60~70%と非常に高いスコアとなりました。
- アジアの都市では「置き配」が広く使われています。よく使う受取方法としてあげられたのは、東京では10%以下ですが、バンコク(47%)や上海(43%)ではトップとなっています。
- 時系列でみると、商品情報を調べる際にショッピングモールではなく「ブランドサイト・アプリ」を利用する人がマニラやクアラルンプールを中心に増えました。
今年のテーマ「カスタマー・エクスペリエンス」について
■「残念な体験」は商品写真と実物との相違や配送遅れ
アジア各都市の消費者に対して、オンラインショッピングの際に同じサイトをもう利用したくないと感じる「残念な体験」について尋ねたところ、「届いた商品が写真と大幅に違った」(1位)、「約束された商品の発送日・予定到着日が守られず遅れた」(2位)、「サイトの画像が小さく、商品詳細がわかりにくかった」(3位)が上位にあがりました。特に、「届いた商品が写真と大幅に違った」は、ハノイ(58%)、クアラルンプール(55%)、ジャカルタ(54%)、上海(53%)と、4都市で過半数の回答を得ました。なお、東京では「特に該当しない」との回答が38%と、他の都市と比べて最も多い結果となりました(図表 1)。
図表 1 オンラインショッピングでの残念な体験(複数回答)(%)
■「嬉しい体験」は、送料無料や丁寧な梱包
次に、また同じオンラインショッピングサイトを利用したいと感じる「嬉しい体験」について尋ねたところ、「有料配送のはずが送料無料で購入できた」(1位)と「梱包が丁寧だった」(2位)が上位にあがっています。都市別で比べると、「梱包が丁寧だった」が東京(32%)と上海(43%)ではトップ、それ以外の8都市では「有料配送のはずが送料無料で購入できた」がいずれも60~70%と非常に高いスコアとなりました。また、「サポートが充実していて、問い合わせした内容がすぐに解決した」(3位)も、マニラとムンバイを除く8都市は上位3位以内にあがっています。なお、東京に関しては「嬉しい体験」においても「特に該当しない」の回答が39%と、他の都市と比べて最も多い結果となりました(図表 2)。
図表 2 オンラインショッピングでの嬉しい体験(複数回答)(%)
■「期待する体験」は送料無料サービスや特典の充実
オンラインショッピングにおいて期待する体験を探るべく、商品の価格や機能以外であったら嬉しいと思うことについて尋ねました。各都市共通して上位にあがったのは、「送料無料サービス」(69.9%)と「ポイントやクーポンなどの特典の充実」(54.0%)となりました。続いて、「即日配送サービス」(25.1%)が東京、台北、クアラルンプール、ハノイ、バンコク、ジャカルタ、ムンバイで、「商品の口コミの充実」(24.5%)が上海、台北、クアラルンプール、マニラ、シンガポールで上位となりました(図表3)。
図表 3 オンラインショッピングをする上で、商品の価格や機能以外で、あったら嬉しい体験(複数回答)(%)
定点調査項目からのトピックスについて
■「置き配」は、アジアの各都市で広く利用
商品の受け取り方法では、3年間継続してアジア各都市で宅配の利用が多く、特に「時間指定配送」が、東京、クアラルンプール、マニラ、シンガポール、ムンバイ、バンコクで、また、「即日配送」が、ジャカルタで最も利用されるなど、これらが多く利用されています。一方で宅配以外の受取方法としては、クアラルンプール、ハノイ、マニラ、バンコク、ジャカルタ、ムンバイでは「職場受取」もよく利用されるほか、また、台北では、「コンビニ受取」が引き続き最も利用されています。
なお、日本で「置き配」の利用が話題になったことから、今年の調査に新しい選択肢として追加したところ、8都市(東京、上海、台北、クアラルンプール、ハノイ、バンコク、シンガポール、ジャカルタ)で広く利用されており、特に上海とバンコクでは、最も利用される受取方法となりました(図表4)。
図表4 オンラインショッピングの際に利用する受取方法(複数回答)(%)
■マニラ、クアラルンプールを中心に、「ブランドやメーカーのショッピングサイト・アプリ」での情報収集が増加
次に、最初に商品情報を調べる際に利用するサイトでは、検索サイト、オンラインショッピングモール、ソーシャルメディアは、上位にあがっており、よく利用されています。各都市で最も利用されているサイトとしては、東京、台北、シンガポール、ハノイでは検索サイト、上海、バンコク、クアラルンプール、ジャカルタ、ハノイ、マニラ、ムンバイではオンラインショッピングモール、マニラではソーシャルメディアとなっています。
また、経年で変化がみられたものは、ブランドやメーカーのショッピングサイト・アプリで、東京、バンコク、マニラ、クアラルンプール、ハノイ、ムンバイ、シンガポールの7都市で増加傾向にあります。特にマニラ(9ポイント増)とクアラルンプール(8ポイント増)で大きく増加しています。また、その他では、価格比較サイト・アプリやキャッシュバックサイト・アプリの利用も増加傾向にあります(図表 5)。
図表5 あなたがオンラインで商品情報を調べる際、最初に利用するサイトをお答えください。(単一回答)(%)
一方、実際に商品を購入する際によく利用するオンラインショッピングサイト、アプリでは、各都市依然として大手オンラインショッピングモールの利用率が高く、東京、ムンバイではAmazon、クアラルンプール、マニラ、バンコク、シンガポールではLazada、上海ではTmallが最もよく利用されています。また、Shopeeについては、台北(1位)、クアラルンプール(1位)、ハノイ(1位)、マニラ(2位)、バンコク(2位)、シンガポール(3位)、ジャカルタ(1位)となるなど、7都市で順位を上げてきています。なお、Facebookも引き続き、クアラルンプール(3位)、ハノイ(2位)、マニラ(3位)、バンコク(3位)では上位となっています。(図表 6)。
図表6 あなたがよく利用するオンラインショッピングサイト及びアプリをお答えください。(複数回答)(%)
■「アジア10都市オンラインショッピング利用者動向調査2019」について
調査方法:インターネットによるパネル調査
調査対象都市:日本(東京)、中国(上海)、台湾(台北)、インドネシア(ジャカルタ)、シンガポール(シンガポール)、タイ(バンコク)、マレーシア(クアラルンプール)、ベトナム(ハノイ)、フィリピン(マニラ)、インド(ムンバイ)の10都市
調査対象者:10-40代の男女で、直近1年以内のオンラインショッピング利用(購入)経験者
回収サンプル数:320x10都市=計3,200サンプル
調査実施期間:2019年12月13日~2020年1月7日日
東京に比べるとアジアの都市では、明快な商品写真や配送日遵守されていないといった基本がまだ十分でないECサイトが多いことをうかがわせます。CX視点でみた「残念な体験」を減らすためには、画像改善により、事前の期待と実際の体験のギャップを生まないことに配慮することが重要となります。一方、梱包や送料などそれぞれの都市であたりまえと思われている水準を知り、それを超えることが顧客の「嬉しい体験」に繋がると考えられます。 また、消費者行動の変化で注目されるのは、商品情報検索における、ブランドやメーカーのショッピングサイト・アプリの利用が徐々に増えていることです。購入時では依然として大手オンラインショッピングモールが主に利用されていますが、ブランドやメーカーのショッピングサイト・アプリは、検索サイトやオンラインショッピングモールに次ぐ情報収集チャネルとして重要性が高まっていることがうかがえます。
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Yokoyama/Ms Everyday Holiday