【オウリー通信】コロナ禍で躍進する海外のEC関連ユニコーン企業

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今回は、シリコンバレー現地のリサーチアナリストが海外のEC関連ユニコーン企業を紹介するよ!どんな企業がでてくるかな?

  シリコンバレーでデジタル分野の事業開発調査を行うトランスコスモスの担当者が執筆しています。海外では、特に今年に入り、多額のVC(ベンチャーキャピタル)投資資金が動き、数多くのユニコーン企業が輩出されました。本記事では、EC分野にフォーカスし、現地で捉えたVC投資のトレンドだけでなく、2021年に注目を集めた具体的なEC関連の新興ユニコーン企業と併せて、包括的に取り上げます。

  コロナ禍において、世界的にソーシャルメディア利用率が増加したこと、また各主要ソーシャルメディアがショッピング機能を拡充してきたことを背景にソーシャルコマースが盛り上がりを見せている。特に、東南アジアではFacebook利用率が高いことを背景に、同プラットフォームにおけるソーシャルコマースの取りが急増。Facebook自身も「対話コマース」や「ライブコマース」、「越境販売」におけるショッピングソリューションの提供に注力している。

  米調査会社CB Insights社によれば※1、2021年第2四半期のグローバル全体でのVC資金調達額は、1562億ドル(約17兆円)で前年比157%伸長し、過去10年間で最高額を記録。新興ユニコーン企業の数も、当四半期だけで136社と、2020年全体の数128件をも上回る規模まで増加しています。またそのうち、半数以上の76社がアメリカから生まれています。

2016年から2021年にかけてのグローバル全体でのVC資金調達額

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2016年から2021年にかけての新規ユニコーンの推移

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※1 CB Insights "State Of Venture Q2'21 Report" (July 8, 2021)

  ユニコーン企業の業種は様々ですが、ECの他、フィンテックやデジタルヘルス、サイバーセキュリティ、AIなどの分野の企業が数多く見られます。

  新興ユニコーン企業が、このコロナ禍に資金を大きく集めることができているのはこれからの成長期待の表れであり、事業成長のヒントとして学びも多くありそうです。本記事では、2021年にユニコーン企業の仲間入りをした海外スタートアップ企業の中から、ECに関連する企業を5社、企業評価額の大きい順にピックアップします。

  • Back Market:フランス発のスマホ/タブレット再生品マーケットプレイス
  • Weee!:アメリカのアジア系/ヒスパニック系食材宅配サービス
  • Meesho:インドのソーシャルコマース
  • Misfits Market:アメリカの規格外農作物のEC
  • Cameo:アメリカの著名人ビデオメッセージマーケットプレイス

Back Market:フランス発のスマホ/タブレット再生品マーケットプレイス

https://www.backmarket.com/

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 フランスのスマートフォン・タブレット・パソコン等のリファービッシュ再生品マーケットプレイスを運営する会社です。 2014年設立、本社はフランス・パリ。

「サステナビリティ(持続可能性)」を事業の核に据えており、昨今の世界的なSDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)の追い風にも乗り、2021年5月の資金調達で、32億ドルの企業評価額で3億3500万ドルを集めています。 リファービッシュ再生品は、商品の品質が事業運営の要となりますが、品質を確保するため、登録販売者にはBack Market独自の厳しい品質ガイドラインに沿って基準を満たすことを求めており、加えて、最初の40日間は1日に5点以上の販売不可、Back Marketスタッフによる無作為の商品購入確認、1年動作保証と14日間の全額返金保証など、購入者が安心して購入できるショッピング環境を構築しているのが特長です。

2021年より日本でも事業開始しており、現在アメリカ、ヨーロッパ中心に13か国(アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、スペイン、ベルギー、オーストリア、オランダ、ポルトガル、フィンランド、アイルランド、日本)に展開しています。

Weee!:アメリカのアジア系/ヒスパニック系食材宅配サービス

https://www.sayweee.com/

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 アメリカのアジア系/ヒスパニック系のオンライン食材宅配サービスを提供する会社です。 2015年設立、本社はアメリカ・カリフォルニア州フリーモント。 アメリカでは、大手スーパーマーケットチェーンによるオンライン宅配サービスは進んでいますが、これらのスーパーマーケットで販売されるアジア系/ヒスパニック系の食材は極めて限定的で、品数も少ない状況です。アメリカは、移民の国ということもあり、日系/中国系/韓国系/インド系/ヒスパニック系など、各地域の専門店も数多く存在し、現地のアジア系/ヒスパニック系の方々は、それぞれの国の食材は専門店で購入することが一般的です。しかし、専門店は1つ1つが小規模で、オンライン宅配等のサービスはまだ充実していません。その需要をうまくくみ取ったのがこのWeee!です。 2019年時点、アジア系アメリカ人は約2,300万人※2、ヒスパニック系アメリカ人は約6,050万人※3おり、その数は白人の人口増加以上で増えることが予想されています。 ニッチなマーケットながら、市場成長も期待大きく、2021年3月の資金調達で、28億ドルの企業評価

※2 Pew Research Center "Key facts about Asian Americans, a diverse and growing population" (APRIL 29, 2021)

※3 Wikipedia Hispanic and Latino Americans" (July 8, 2021)

Meesho:インドのソーシャルコマース

https://meesho.com/

meesho.png 有望なスタートアップを数多く輩出してきたシードアクセラレーターY Combinatorの身で、Facebookも出資するインドのソーシャルコマースプラットフォームを提供する会社です。 2015年設立、本社はインド・バンガロール。 インドは、経済発展中で、依然として個人商店が数多く存在し、経済を下支えしています。ただ、個々は資金力が乏しく、Amazonのようなマーケットプレイスへ出店するにはハードルがあります。 Meeshoは出店費用が掛からないWhatsAppやFacebook、Instagram等のソーシャルメディアプラットフォーム上で販売できるオンラインマーケットプレイスを提供しています。その仕組みが特長的なのは、個人商店などの「セラー」が販売する商品に、インフルエンサーなどの「リセラー」が独自のマージンをつけて、ソーシャルメディアで販売できるオンライン"リセール"マーケットプレイスを提供している点です。 Meeshoへの出店は基本無料で、売買成立した商品の配送に基づいて、10-20%の手数料を受け取る収益モデルです。女性をメインターゲットにしており、商品は、民族衣装のサリー等のアパレル・ファッションや化粧品、ジュエリーなどが取り扱われています。 2021年4月の資金調達でソフトバンクグループ等から、21億ドルの企業評価額で3億ドルを集めています。

Misfits Market:アメリカの規格外農作物のEC

https://www.misfitsmarket.com/

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 アメリカの規格外のオーガニックな農作物をオンライン販売する会社です。 2018年設立、本社はアメリカ・ニュージャージー州ペンサウケン。 スーパーなど小売店に卸せない、型崩れや規格外の新鮮なオーガニックの農作物を、市場より40%程度価格を抑えてオンラインで販売する、というサービスを提供しています。野菜など生鮮食品だけでなく、食品会社の余剰在庫品やラベル貼付ミス商品なども取り扱っています。 2021年4月時点の利用者は40万人で、2020年は前年比5倍の成長を記録し、年商は1億ドルを超えるようです※4。現在のサービス提供エリアはアメリカの東海岸を中心にしており、他の地域にも順次拡大予定としています。 食品廃棄物を軽減することを事業の核に据えており、サステナビリティの観点でも評価され、2021年4月の資金調達で、11億ドルの企業評価額で2億ドルを集めています。

※4 Forbes Japan "食品ロスを軽減するEコマース企業「Misfits Market」が215億円を調達" (2021/04/30)

Cameo:アメリカの著名人ビデオメッセージマーケットプレイス

https://www.cameo.com/

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 著名人とファンを結ぶビデオメッセージのマーケットプレイスを提供する会社です。 2017年設立、本社はアメリカ・イリノイ州シカゴ。 俳優やタレント、アスリート、ミュージシャン、クリエーターなど各分野の著名人に、サプライズの動画など、パーソナルなビデオメッセージを依頼できるマーケットプレイスを提供しています。料金は、1ドルから1,500ドルの間で著名人が自分で自由に設定でき (概ね1本50ドル~300ドル)、Cameoが25%手数料として受け取り、残りの75%が有名人に支払われる仕組みです。 具体的には、利用者が依頼する際、支払いとともに250文字で依頼内容を送信。著名人は、依頼が入ったら、依頼主の台本を読み上げたものを録画し、動画をアップロード。利用者はその動画をダウンロードして閲覧できる、というものです。 新型コロナウィルスの影響により、アスリートやミュージシャンなど著名人もファンとの接触機会が激減しました。この追い風もあってCameoの需要も高まり、2021年3月の資金調達で、10億ドルの企業評価額で1億ドルを集めています。

 

<最後に>

  • 新型コロナウィルスの巣ごもり消費の影響で、世界的にECの需要は急増しました。AmazonやWalmartはこのコロナ禍に過去最高売上を更新しましたが、追い風に乗ったのはこれら大手事業者だけでなく、新興のECスタートアップも、大型資金調達でユニコーン企業の仲間入りをして躍進してきました。

  • 今回取り上げたEC関連のユニコーン企業を見ると、Back Marketのスマホ再生品やWeee!のアジア/ヒスパニック食材、Mistfits Marketの規格外農作物など、フォーカスを絞り、ニッチだが確実に市場がある分野に専門特化する形が、投資家の評価を得ていました。インドのMeeshoも、現地にはAmazonやFlipkartなど大手事業者が存在する中、現地商習慣に合わせたソーシャルコマースを展開しており、その独自性が評価を得ているようです。た。

  • また併せて、以前のトランプ政権時代には際立って見られませんでしたが、スマホ再生品のBack Marketや規格外農作物のMistfits Marketを見ると、サスティナビリティ(持続可能性)の観点も、海外投資家の間では評価が高まっているようです。 筆者が、今回取り上げたEC関連のユニコーン企業から得た、評価されるポイントのファインディングスは以下の3つでした。

・ ニッチだが確実に市場がある分野への専門特化

・ 現地商習慣に合わせた独自性

・ サスティナビリティ(持続可能性) 本記事が、読んで頂いた方の事業成長のヒントを生み出すきっかけとなれば幸いです。

・ 本記事は、2021年8月20日までの情報をもとに作成しています。

・ 本記事は、執筆者が一般に信頼できると思われる情報に基づいて作成していますが、情報の正確性や完全性を保証するものではありません。

・ また情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。

・ 本記事の情報を利用することで、読者に何らかの損害が発生したとしても、執筆者及びトランスコスモスは一切責任を負わないものとします

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