2018年より毎年実施してきた「アジア10都市オンラインショッピング利用調査」の設問を継承し、調査対象都市から5都市を残したうえで、新たにソウル(韓国)、ニューヨーク(米国)、ロンドン(英国)を加えた世界8都市のショッピング利用者を対象としました。また、環境を意識した「サスティナブル消費」(Sustainable Consumption)のほか、注目を集める「ライブコマース」(Live Streaming E-commerce)や「越境EC」(Cross Border E-Commerce)などの利用実態もとりあげ、グローバル視点でのオンラインショッピングの実態を明らかにしています。ここでは、これら3項目に関する注目ポイントを中心にご紹介します。
■東京以外の7都市では、サスティナブル消費の理解や実践が進んでいる
- サスティナブル消費という言葉の現地語を提示したうえで、その言葉を知っているか、日頃から意識して買物をしているかについて4段階で尋ねたところ、ムンバイと上海では理解度が8割、実践度が6割を上回った。
- 具体的には、オンラインでの買物にあたって「環境保護に積極的に取り組むブランドを選んでいる」(8都市平均41%)や「メンテナンスや修理サービスを提供しているブランドを選んでいる」(同28%)などブランドを意識した項目が上位にあがる。アジアの都市では「省エネの商品を選んでいる」との回答も多い。
- 東京は言葉も聞いたことがないとの回答が36%を占め、他の7都市に比べると認知も実践も大きく遅れている。
図表1. サスティナブル消費の理解・実践度
日頃のオンラインショッピングにおけるサスティナブル消費の行動について尋ねたところ、全体的に「環境保護に積極的に取り組むブランドを選んでいる」や「メンテナンスや修理サービスを提供しているブランドを選んでいる」、「サステナビリティ関連の認証を受けている商品やブランドを選んで購入している」などが上位にあがりました。最も取り組まれている「環境保護に積極的に取り組むブランドを選んでいる」を都市別で比べると、特にムンバイでの回答率が高く、他都市を大きく引き離して63%となりました(図表2)。
図表2. オンラインで意識するサスティナブル消費について(都市別/複数回答)(%)
サスティナブル消費を意識して購入する商品としては、「ファッション(アパレル、鞄、アクセサリーなど)」、「日用品・トイレタリー」と「化粧品・医薬品」などが上位にあがっており、日常的に使用する商品でサスティナブル消費を実践している傾向にあります。最も購入されている「ファッション(アパレル、鞄、アクセサリーなど)」では、東京とソウルを除く6都市では購入割合が70%以上となり、なかでもムンバイの回答率が84%と高い結果となりました(図表3)。
図表3. オンラインでサスティナブル消費した商品について(都市別/複数回答)(%)
■ショップとのコミュニケーションやソーシャルメディアの活用に積極的なアジア4都市
- 上海・ムンバイ・バンコク・ジャカルタのアジア都市は、さまざまな手段を積極的に活用することで良い買い物をしたいというこだわりが強く、ソーシャルメディアやショップ側とのコミュニケーションへのニーズも高い。推奨されるための個人情報提供も6割以上が容認している。
- 今回新たに対象となったニューヨーク、ロンドンではブランドを意識するとの回答が8割を超えた。店舗受取も重視されている。ソウルは他のアジア都市より、むしろニューヨークとロンドンに近い傾向がみられる。
- 東京は新しい技術や手法に対して消極的であり、昨年までと同様の傾向が続いている。チャット、ライブコマース、アバター活用など新しい販売手法やコミュニケーションへの関心も低い水準にとどまる。
図表4. オンラインショッピング意識(都市別/複数回答)(%)
■いずれの都市でも越境ECサイトは広く利用されており、日本ブランドの購入意向も高い
- アジア、欧米各都市における国外のECサイト(越境EC)利用率はいずれも50~70%台で、すでにグローバルレベルで定着している段階である。日本のECサイト利用率は上海(33%)が最も多く、以下バンコク(27%)、ジャカルタ(20%)が続いているが、ニューヨークとロンドンは1割に満たなかった。
- 一方、越境ECによる日本ブランドの商品購入意向は各都市とも非常に高く、ニューヨークとロンドンでも6割を超えた。日本のECサイトにとってポテンシャルは大きい。
図表5. 国外EC(越境EC)サイトの利用率と日本ブランドの購入意向(東京を除く7都市)
越境ECサイトで購入したい日本商品としては「ファッション(アパレル、鞄、アクセサリーなど)」や「化粧品・医薬品」、「家電・パソコン」などが上位にあがりました。最も購入意向の高い「ファッション(アパレル、鞄、アクセサリーなど)」を都市別に比べると、上海やソウルなど近隣都市を除くと回答率は60%以上となり、特に、バンコク(73%)とロンドン(71%)では需要が高いことがわかりました(図表6)。
図表6. 国外EC(越境EC)サイトで購入したい日本商品について(東京を除く7都市)
越境ECサイトから日本商品を購入するハードルとしては、「関税や配送料が高い」や「配送に時間が掛かる」などが主な理由としてあがっています。都市別で比べると、これらを理由にあげているのはアジア圏のオンラインショッパーが多く、例えば「関税や配送料が高い」では、ジャカルタ(70%)、バンコク(63%)、上海(56%)の3都市、また「配送に時間が掛かる」では、ジャカルタ(60%)と上海(57%)で高い回答率がみられました(図表7)。
図表7. 国外EC(越境EC)サイトで日本商品を購入する際のハードルについて(東京を除く7都市)
■「世界8都市オンラインショッピング利用動向調査」について
調査方法:インターネットによるパネル調査
調査対象都市:東京(日本)、ソウル(韓国)、上海(中国)、ムンバイ(インド)、バンコク(タイ)、ジャカルタ(インドネシア)、ニューヨーク(米国)、ロンドン(英国)
調査対象者:10歳から49歳の男女、直近1年以内のオンラインショッピング利用(購入)経験者
回収サンプル数:320x10都市=計2,560サンプル
調査実施期間:2022年1月17日~24日
調査委託機関:クロス・マーケティング
今回、過去に調査対象としてきたアジア5都市に加え、新たにソウル、ロンドン、ニューヨークの3都市を加えたことにより、今まで以上に地域別の傾向が際立つ結果となりました。全体的にアジア圏の方が、ソーシャルメディアやテクノロジーを使用した新しいショッピング手法、またサスティナブル消費など社会的課題への意識も高いことが明らかとなり、特に、上海やムンバイ、バンコク、ジャカルタなどのアジア4都市が積極的であることがわかりました。一方で、東京では引き続き他都市と比べて、このような新しい販売手法に対して保守的です。経年の調査から、新興国ではまだオンラインで販売される商品と実物とのギャップが生じていることが判明しており、その結果、この差を埋めるためにライブコマースやAR・VRといった新しいテクノロジーによる販売方法を積極的に活用しているのではないでしょうか。このような消費者の意識の違いを踏まえると、日本ブランドが現地でマーケティングに取り組む時は、顧客にブランドや商品に関心をもってもらうためライブコマースやインフルエンサーの活用など、新しいプロアクティブな商品紹介方法を積極的に取り組むことが求められていると考えられます。
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