3月9日、「アマゾンジャパン」がネットスーパーサービスを拡大するにあたり、東海・甲信越・北陸・近畿地方を中心に店舗を展開する「バローホールディングス」と協業したことを発表しました。今夏をめどに東海地方において、バローの実店舗で取り扱う生鮮食品をアマゾンプライム会員向けに、最短2時間で配送するサービスの提供を始めます。まずは愛知県名古屋市の一部エリアから開始し、順次配送エリアを拡大する計画。販売する商品としては、生鮮食品やバローのプライベートブランド商品を合わせて約8,000品目から開始する予定となっています。
情報源:Impress「Amazon、東海地域で生鮮食品のネットスーパー展開。バローと協業」(2021/03/09)
3月10日、米大手小売「ウォルマート(Walmart)」が、2022年1月期に物流施設の自動化などに140億ドル(約1兆5千億円)を投じ、デジタル対応を加速させることを日本経済新聞が報じました。これは日本のセブン&アイ・ホールディングスの10倍以上の規模に相当します。ウォルマートでは、2020年に、ピックアップやデリバリーで、5年間分のデジタル成長をわずか5週間で実現したと言及しており、そのためネット通販事業は好調で2020年11月~2021年1月期には69%成長を見せました。ブレット・ビッグス(Brett Biggs)最高財務責任者は「今後数年でEC(電子商取引)の年間売上高は1,000億ドル(約10兆9,000億ドル)に近づく」と見込んでおり、今期については春よりアーカンソー州でIoTを使った宅配ボックスの実験を始め、顧客が留守でも食品宅配を可能にします。
情報源:日本経済新聞「ウォルマート、ECに1.5兆円 物流自動化や宅配強化 今期、セブン&アイの10」』 (2021/03/10)
3月11日、中国大手ネット通販「京東(JD.com)」が、第4四半期および通期決算を発表しました。2020年の売上高は前年比29.3%増の7,458億元(約12兆5,000億円)、純利益は前年の4倍の494億元(約8,286億円)となりました。新型コロナの巣ごもり消費の後押しや「独身の日」での取扱高が過去最高となったことかシェア2位を確保するなど好調を見せました。一方で、利用者数は首位の「アリババ(Alibaba)」や3位の「拼多多(PDD)」との差が開いている状況で、両社は利用者数がすでに7億人を超えるところ、京東は2020年12月時点で前年から約3割増の4億7,100万人に留まっている状況です。2020年度の主なハイライトとして、「エルメスグループ(Hermes Group)」や「モエヘネシールイヴィトングループ(LVMH)」傘下のブランドが旗艦店を開設したほか、「プラダ(Prada)」や「ミュウミュウ(MiuMiu)」などがオムニチャネル展開を強化するために提携したことなどを挙げています。また、物流面においては、脱酸素に向けて京東傘下のJDロジスティクスが中華系物流事業者として始めてSBTiに参加し、2030年までに2019年比で炭素排出量50%削減を目指します。
情報源:同社プレスリリース "JD.com Announces Fourth Quarter and Full Year 2020 Results"(2021/03/11)
今週、国内大手ネット通販事業者が相次いでラストワンマイルを加速させる動きを始めました。先手を打ったのは「アマゾンジャパン」で、3月8日にプライム対象商品の土日出荷の義務化をマーケットプレイス事業者に通知しました。これまでは任意での対応でありましたが、配送サービスの品質向上を目的に7月より義務化し、配送時間の目標値などの導入も開始し、これらに対応できない場合は優良業者を示す「プライム」認定を外す措置を取ると言われています。続いて10日に「ヤフー」は、ヤフーショッピングやPayPayモール出店ストアを対象に、物流受託料金を全国一律に設定することを発表しました。4月から開始するサービスを利用することにより、サイズ別の全国一律料金での配送が可能となります。また、5月からは一部地域を対象に当日配送にも対応する計画です。そして、12日に「楽天」は、日本郵政と日本郵便との業務提携および1,500億円の出資を受けることを発表しました。この提携は2020年12月にまで遡り、両社は日本郵便のもつ物流の全国ネットワークや荷量データ、そして楽天の保有するネット通販のデータや運用ノウハウを活かし、物流分野のDX実現に向けて協業することから始まっています。なお、今回は物流以外に通信といった複数分野での提携を発表していますが、EC領域において、物流以外にキャッシュレス決済や保険分野における協業も視野に入れています。
情報源:日本経済新聞「ヤフー、ECの物流受託料金を全国一律に」(2021/03/10)
情報源:Cnet Japan 「日本郵政、楽天と資本業務提携、約1500億円出資--物流や金融、モバイル、DXなどで連携」(2021/03/12)
3月15日に新華社通信は、中国の国家市場監督管理総局(SAMR)が年内に電子決済に関わるプラットフォーム企業の責任を明確にする新たなルールを導入すると報じました。中国当局では、これまで以上に厳しい監督方法を採用することにより、オンライン市場の顕著な問題解決に繋げたいとしています。これに合わせてオンラインでの取引情報をリアルタイムに収集するシステムを構築し、監視・調整の実現することを目指すとしています。
情報源:ロイター通信「中国当局、電子決済企業の責任明確化へ新規則策定へ=新華社 (2021/03/15)
岩手県を中心に東北6県で店舗を展開するドラッグストアの「薬王堂」は、小売のデジタル化を支援する10Xとの提携によりドライブスルーアプリの提供を開始しました。リリースした「P!ck and(ピックアンド)」アプリでは、薬王堂で販売する食品、日用品、そして第一医薬品を除く医薬品をアプリ上で購入できます。商品の受取は、駐車場でクルマから降りることなく商品を受け取ることのできるカーブサイドピックアップ、あるいは店舗受取から選ぶことができます。商品は注文から最短2時間で受け取ることができ、手数料は220円かかります。
情報源:日本経済新聞「ドラッグストアでドライブスルー 10Xと薬王堂」(2021/03/15)
3月11日、韓国大手ネット通販「クーパン(Coupang)」がニューヨーク証券取引所に上場し、IPO価格は46億ドル(約5,000億円)と、ウーバー・テクノロジーズ(Uber Technologies)に次ぐ大型IPOとなり、時価総額は一時期1,000億ドルを超え、世界的にその成長性でアマゾン(Amazon)やアリババ(Alibaba)などのグローバル企業と肩を並べたとして注目を集めています。今回の上場に伴い、特に過去10年間独自技術で構築してきた「密集都市型物流システム」が注目を集めています。現在、クーパンは韓国全土に約170もの物流拠点を保有していると推定されており、この物流網を構築したことにより2014年より深夜0時までに注文した商品が翌日届く「ロケット配送」を実現。クーパンは、上場により調達した資金を投じてソウル・首都圏以外の地域に7カ所のフルフィルメントセンターを構築するとしています。市場のクーパンへの期待が高まる中で、3月15日に大手ネット「ネイバー(Naver)」と大手小売「イーマート(Emart)」が資本提携交渉を進めていることが明らかとなりました。数百億円を相互に出資し、提携を通じてネイバーはイーマートの保有する生鮮食品の仕入・配送ノウハウを取り込み品揃えの充実を図り、またイーマートはオンラインマーケットプレイスへの出店に加え、ネイバーの展開する決済や検索などのサービスを活用し集客力を高めることを狙うと言われています。なお、ネイバーは2020年10月に地場大手物流のCJ大韓通運との提携を通じて物流面を強化したばかりです。また、現在大手ネット通販「イーベイ(eBay)」は韓国から撤退を発表しており、これに伴い流通総額3位の「イーベイコリア(eBay Korea)」の売却も進めています。同社の買収に対して地場大手小売「ロッテグループ」や通信大手「SKテレコム」などが買収に意欲を示しており、韓国のネット通販市場の勢力争いは続くとみられています。
情報源:中央日報「韓経:米「アマゾンよりも良い」...韓国コマース企業「クーパン」に熱狂する理由」(2021/03/15)