NEW【EC業界ニュース】Weekly Topics! 0307-0313

Today’s Topic
今週の注目は2024年1月に世界で最も利用されたECアプリランキングです。上位10位のうち7つを中国企業が関連するアプリが占め、米中陣取り合戦が激化しています。
●2024年1月に世界で最も利用されたECアプリの上位を中国勢が席巻

global.jpg  米調査会社Sensor Tower(センサータワー)によると、2024年1月に世界で最も利用されたECアプリはシンガポールのShopee(ショッピー)でした。本調査は2024年1月の月間利用者数を調べたもので、中国勢が上位を占め、10位までの7つが中国系のサービスとなりました。格安ECサイトとして注目を集めるTemu(ティーム―)は越境ECとして各国で利用者が急増しており、フランスやドイツ、英国で首位を獲得し、米国では首位Amazon(アマゾン)の下につきました。ファッションEC事業者SHEIN(シーイン)は、世界のアプリ利用者数が5位となり、米国や英国、フランス、タイ、ブラジルなどで上位5位以内にランクインしました。中国勢のEC戦略は独自アプリを世界展開するだけでなく、各国の有力アプリへの出資を通じて勢力を展開しています。例えば、中国大手EC事業者のAlibaba(アリババ)はAliexpress(アリエクスプレス)やXianyu(シェンユー:閑魚)など独自アプリに加え、シンガポールのLazada(ラザダ)やトルコのtrendyol(トレンディオール)など出資や買収を行い各地域に進出しています。中国勢が台頭する中、独自のEC市場を確立しているのが日本とインドです。日本ではAmazonに続き、メルカリと楽天が利用者シェア3位を占め、上位10位内にランクインした中国系ECアプリはTemuのみでした。インドはTikTok(ティックトック)など中国系アプリを禁止している背景から、自国企業がランキングを占め、Flipkart(フリップカート)が首位、3位にMeesho(ミーショ)、4位にmyntra(ミントラ)が続きました。中国勢が席巻するなかAmazonを筆頭に米国系アプリも存在感を示しており、米中陣取り合戦が激しくなっています。

情報源:日本経済新聞 「利用者が多い電子商取引アプリ 中国勢席巻、「ショッピー」首位」(2024/3/11)

●中国EC市場で日本ブランドの存在感が低下

china.png  日本経済新聞によると、中国EC市場で日本ブランドの存在感に変化が起きています。かつて「爆買い」の対象だった日本商品の人気に陰りが見え、特に紙おむつなどは中国ブランドが台頭し存在感が薄れています。背景には、中国企業が低コストで高品質な商品を製造する技術を身に着けたほか、コロナ禍で中国消費者が日本商品を購入する機会が減ったこと、自国ブランドを評価する「国潮ブーム」が台頭したことが影響しています。また越境EC支援のNOVARCA(ノヴァルカ)社CEO浜野氏によると、日本ブランドはマーケティング戦略に弱みがあり、中国で勢力を伸ばすブランドのように現地限定の専売品を販売するなどの提供価値を高める戦略が不足していました。さらに近年ではソーシャルセラーと呼ばれる商品知識が豊富な専門家が、商品の買い付けからECサイトへの出品、値付け、在庫管理までこなし、SNSで商品紹介するビジネスが台頭しています。インフルエンサーマーケティングは今でも中国で活発に行われていますが、タレント化が進んでいないソーシャルセラーが企業の公認アンバサダーなどとして活躍する例も増加しています。浜野氏は、日本ブランドは訪日観光客の帰国後消費を促すために、日本でしか味わえないブランド体験を提供し、越境ECの販売体制整備が不可欠と説明しています。

情報源:日本経済新聞 「中国EC、日本製の人気に陰り 「ソーシャルセラー」台頭」(2024/3/9)

●欧州ではSNSインフルエンサーを介して輸入される偽造品販売が問題視されている

america.png  欧米では、TikTok(ティックトック)や Reddit(レディット)のインフルエンサーによる、中国から輸入された違法なコピー品の販売が問題視されています。2023年12月、TikTokにて12万人のフォロワーを持つ米国インフルエンサーEben Fox(エべンフォックス)氏は、中国商品を販売する越境ECサイトPandabuy(パンダバイ)にてNIKE(ナイキ)の偽造品を販売したとしてNIKEから提訴されました。Eben Foxのほかにも、Pandabuyなどのサイトと連携しCHANEL(シャネル)などラグジュアリー商品からアメリカ人気タレント、キム・カーダシアン氏がプロデュースする下着ブランドSKIMS(スキムズ)、米国で爆発的人気を集めるSTANLEY(スタンレー)タンブラーなど、幅広い商品の偽造品がインフルエンサーによって宣伝されています。Pandabuyは中国大手ECサイトTaobao(タオバオ)やその他中国のEC事業者から何百万もの商品リストを収集し、情報を海外のインフルエンサーに提供しています。消費者が商品を購入してから配送されるまで、商品の真贋判定が行われる過程はなく、多くの偽造品が輸出されています。2023年12月、Pandabuyは公式Discord(ディスコード)にて、2023年は1万5,000人以上のインフルエンサーが同社のアフィリエイトプログラムに参加したと発表しました。中国の裁判所は、偽造品の取締りを開始しているものの、EC市場では偽造品販売事業者告発のモグラたたき状態が続いています。

情報源:WIRED "The Influencers Getting Paid to Promote Designer Knockoffs From China"(2024/3/10)

●米AmazonがWhole Foods Marketの新たな店舗形態を発表

america.png  米Amazon(アマゾン)がWhole Foods Market(ホールフーズマーケット)の店舗展開にて、新たに小型店舗「Whole Foods Market Daily Shop」を展開する計画です。特に都市部を中心に展開し、より効率的なショッピング体験を提供するねらいです。本展開はスーパーマーケットTrader Joe's(トレーダー・ジョーズ)への対抗を目的としており、商品展開はテイクアウト食品やスナックなどの軽食を中心にTrader Joe'sの8倍近い品揃えです。PYMNTSの調査によると、米国消費者が食料品を購入する場所を決定する要素として重要視しているのは「手軽さ」と「利便性」で、今回のAmazonの店舗展開はこのような消費者動向を捉えたものとPYMNTSは説明しています。第一号店はマンハッタンのアッパー・イースト・サイドにて2024年後半にオープンする予定で、ニューヨークにて第二号店を展開する予定です。

情報源:PYMNTS "Amazon Takes on Trader Joe's With Small-Format Whole Foods Stores"(2024/3/11)

●英Frasers Group、買収した英ECのMatches事業閉鎖を発表

UK.png   3月8日、英小売事業者Frasers Group(フレイザーズグループ)が2023年末に買収した英EC事業者のMatches(マッチズ)事業を閉鎖することを発表しました。Matchesは競合のFarfetch(ファーフェッチ)が韓国Coupang(クーパン)に買収された数日後に買収されました。両社はラグジュアリーブランド特化型ECであり、コロナ以前はECサイトを持たないラグジュアリーブランドが多かった一方、コロナ禍でブランドの急速なDXが進みオンラインマーケットプレイスからの撤退など、MatchesやFarfetchにとって厳しい状況が続いていました。特に2023年は独自のECサイトを展開するラグジュアリーブランドが増加し、Aimé Leon Dore(エメレオンドレ)やGabriela Hearst(ガブリエラ・ハースト)はShopify(ショッピファイ)が提供するD2C支援サービスを活用したECサイトを運営しています。Skynews(スカイニュース)の報道によると、Matchesは2023年10月に新たなアウトレットサイト「Matches Outlet」を展開し、ブランドに大幅な値引きを要求したほか、一部のブランドに数か月分の売上支払いを滞納していました。これにより、Matchesから撤退するブランドが増加したと報道されています。ECソフトウェア企業Swap(スワップ)CEOのSam Atkinson(サム・アトキンソン)氏は、ShopifyなどのD2C支援サービスを活用し独自EC事業の展開が可能になったラグジュアリーブランドと、ラグジュアリーブランド特化型EC事業者の対立が顕著になっていると考えています。

情報源:DIGIDAY "「英 マッチズ が終了:マルチブランドECに問われる「ブランドとの関係性」」(2024/3/11)

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