【オウリー通信】世界で注目を集めるライブコマース!

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すごいね、中国ではわずか数秒でスマホ2,000台が完売したよ!

 ライブコマースとは、ライブ配信を行いながら商品を販売する新しい形のネット販売方法です。中国では、MaybellineがアジアのトップモデルAngelababyを活用し、ライブ配信プラットフォーム美拍でリップスティックを2時間で1万本販売したことは有名ですね。ライブコマースは、当初ソーシャルメディアの拡散性を活用し自社ECサイトに誘導する方法から始まりましたが、最近では、同一プラットフォームでのライブ配信から販売までが可能となってきています。日本でも、2017年後半にメルカリやヤフーショッピングなど大手ECプラットフォームが相次ぎライブコマースに参入したことで、本格化の兆しがうかがえます。今回は、海外のライブコマースの最新注目事例をいくつか紹介します。

◎イベントをライブ配信する"See Now Buy Now"、Amazonも実施!

 ライブコマースには様々な形式がありますが、そのひとつとして"See Now Buy Now"があります。"See Now Buy Now"では、イベントのライブ配信を行い、そこで登場する商品をリアルタイムに販売する仕組みです。特に、ファッション業界で取り組まれることが多く、2015年頃より各都市のFashion Week(バイヤーやメディア向けに開催される新作お披露目会)で実施されるようになりました。過去にRalph Lauren、Tommy Hilfiger、Burberryなどのハイエンドブランドも実施したことで話題となっています。

 最近では、Amazonも実験的に"See Now Buy Now"に取り組み注目されました。Amazonは米ストリートブランドNICOPANDAと提携し、2017年9月に開催されたLondon Fashion Weekに"See Now Buy Now"で商品を販売。Instagram Stories限定で実施されたファッションショーの一部商品をAmazon.co.ukをはじめ、欧州5つのサイトで販売しました。イギリスにおいては、Prime会員向けにショー終了から最短2時間でに商品が顧客の手元に届けたことで話題となりました。

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<Amazon UKで販売されたNICOPANDAの限定コレクションのイメージ>

<情報源:Amazon UK

◎中国唯品会、テレビ通販型コンテンツでプロモーションを実施!

 イベントのライブ配信以外に、オーソドックスな方法としてテレビ通販のようにスタジオで司会者が商品説明する例も多く見られます。例えば、中国の人気フラッシュセールスサイト唯品会では、健康食品Swisseを紹介するにあたりフィットネスをテーマとしたライブ配信を実施しました。健康志向で有名な俳優 李浩轩(Li Haoxuan)や赵雨菲 (Zhao Yufei)が、それぞれエクササイズを実演していき、エクササイズの効果を高めるためのサプリメントを紹介しました。その結果、約18,464商品を販売し、肝臓の解毒効果の高いアルティブーストを3,804本、コラーゲンエキスを1,947本販売しました。

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<Swisse商品宣伝の一環として、エクササイズを実演するイメージ>

<情報源:环球网 Swisse唯品国际直播秀精彩不断,掀起一番活力营养新潮

◎対話型のライブコマースも人気!中国では"網紅(ワンホン)"が大ブレイク

 最近ポピュラーなのは、よりエンゲージメント率が高いライブコマースの形式として、視聴者とインタラクティブに対話しながら商品を販売する方法で、その際、ホスト役として有名人から素人と様々なパターンがみられます。

  • 網紅の事例

 特に、中国では数年前よりネットインフルエンサーの"網紅"を活用が大人気です。代表的な事例として、ソフトウェア開発事業者"美図(Meitu)"は、新規開発したスマートフォン 美図M6 の発売にあたり人気網紅の張大奕(Zhang Dayi)を活用。ライブ配信アプリ美拍で、美肌機能についてアピールするほか、視聴者の要望に応えながら自撮りや画像修正テクニックを紹介することで、発売後わずか数秒で2,000台が完売しました。

 このように購買に多大な影響力を持つ網紅に注目し、外資系ブランドによる中国人網紅の活用も積極的取り組まれています。大手化粧品メーカーEstee Lauderは2017年のダブルイレブンの際、同社の保湿クリーム"爱怡美"を販売するにあたり、淘宝直播達人ランキング1位の薇娅(Viya)を活用したキャンペーンを実施しました。薇娅は、保湿クリームの効能について説明しながら商品を試す様子を配信し、効能が高いにも関わらず手が届きやすい価格とコストパフォーマンスの良さについても訴求していきました。その結果、わずか数秒で約数千件の注文が入ったそうです。

IEM.png<薇娅が爱怡美を試す映像のイメージ:薇娅は、約100万人のフォロワーを誇り一回のライブ配信で7000万元の売上を記録するなど、淘宝直播達人のなかでも群を抜く>

<情報源:鳳凰網爱怡美素颜霜独家冠名淘宝超级主播薇娅

  • マイクロインフルエンサーの事例

 欧米では、フォロワー数は少ないながら特定分野における専門的な知識を持ち、高い影響力を持つマイクロインフルエンサーの活用が注目を集めています。例えば、ミレニアル世代の間で人気なファッションブランドRebecca Minkoffは、2016年頃からFashion Weekに参加せず、一般公道でファッションショーで"See Now Buy Now"に取り組むようになりました。その際、ファッション分野において影響力のあるマイクロインフルエンサーを招待し、ショーのモデルとして参加させるほか各種ソーシャルメディアでショーの模様を写真やライブ配信で投稿してもらっています。

<ショーに招待された200名のうちの一人Stephanie ChanのTwitter投稿、フォロワー数は1,000人にも満たないマイクロインフルエンサー>

<情報源:Hollywood ReporterRebecca Minkoff's SoCal Runway Show Was About Female Empowerment

 中国においても同様にマイクロインフルエンサーが活用されています。例えば、杭州四季青服装市場(卸売りセンター)では、一般人女性の哈娜(Hana)によるライブコマースで女性向けアパレル商品を販売しています。哈娜は、張大奕や薇娅のようなモデル体型ではありませんが、ライブ配信を通じて商品の色合い、生地、フィット感を説明を丁寧に説明し、さらにリアルタイムに質問に対して答えていることから人気を集めています。杭州四季青服装市場によると、今まで約2-3日間で570着ほどの商品を販売していたところ、哈娜のライブ配信で半日で同等の商品数を販売することができ、一日当たりの売上が約100万元の日もあるそうです。

引用:杭州24小时 公式腾讯视频アカウントより"直播卖衣服!四季青服装市场引入"网红经济" 一天销售破百万"

<哈娜がライブ配信を行う様子、質問ひとつひとつ見逃さずに回答していく動画>

  • 自社社員の事例

 商品知識が豊富な社員によるライブコマースも取り組まれいます。アメリカでは、化粧メーカー L'Oréalはインフルエンサー活用を積極的に進める傍らで、自社従業員のメイクアップアーティストによるライブコマースにも取り組んでいます。2017年10月に、傘下ブランドLancômeの社員は、メイクアップに特化したライブ配信プラットフォームのYouCam Appで、ハロウィン向けメイクアップの手順について丁寧に説明し、視聴者の質問にも対応しながら紹介。さらに、ARを用いたメイクアップの体験、そして使用商品をアプリ内で購入できるようにしました。

YMK_Halloween.png

<YouCam Appで紹介したメイクアップの一部>

<情報源:Brand Channel In Time for Halloween, L'Oréal Expands YouCam Virtual Tutorials to Lancôme

  • 農村コマースの事例

 中国では農民が商品紹介する農村ライブコマースが注目を集めています。健康志向が高まるなか、生産者から直接生産過程や商品特徴を聞くことができるということで人気で、農村における新たな収入源として農村経済振興策としても取り組まれています。例えば、内モンゴル自治区の農民 史岱奇さんは、小麦粉のライブコマースを行っています。商品の特徴に加え、調理方法として麺への加工の仕方について紹介しています。彼女の月収は6万元程度ですが、1時間のライブ配信で同等の収入を得ることができたそうです。

農村.jpg

<史岱奇さんが小麦を使った料理を紹介する動画のイメージ>

<情報源:新浪看点 田间地头农产品直播成潮流?内蒙古农村电商势头猛进

 ちなみに、同じ農村ライブコマースでも、網紅を招待し農産物などをPRするライブコマースに取り組む事例も増えています。例えば、重慶市秀山では90後の農村網紅(村紅)を招待し、卵のPRを行いました。その際、村紅は卵の品質の良さを訴求するにあたり鶏の育った環境を見せ、さらに農家に教わりながら鶏の捕まえ方や卵の収穫方法について紹介しました。これにより、卵を10万個売り上げることに成功したそうです。

※90後とは、一般的に1990年代生まれの世代を指す言葉で、中国の消費をけん引する世代として注目を集めています。

<村紅が農民に鶏の育成や卵の収集について教わり、商品の安全性や品質を紹介する動画>

<情報源:Tencent Video 直播电商 网络直播构建新模式

注目サービス

 今回紹介した事例で活用されたライブ配信プラットフォーム一覧。

  • 淘宝直播 :アリババが提供するライブ配信サービス。ライブ配信を行うクリエイターは登録制となっており、同社の審査を通った影響力の高い人のみライブ配信を行うことができる。コンバージョン率は32%ともいわれている。
  • 唯品会直播:フラッシュセールスサイトの唯品会が提供するライブ配信サービス。スマホアプリでのみサービスを展開。
  • 美拍 :女性に人気な動画アプリ。ファッションやメイクアップに対する関心の高い層が集まっていることから、L'Orealなど外資系ブランドも積極的に活用している。
  • Instagram:Facebook傘下の写真共有SNS。2016年よりライブ配信も可能となった。
  • YouCam Makeup App:Perfect Corpが提供する、メイクアップに特化したSNS。アプリでは自撮りのほか、ライブ配信、ARでのメイクアップ体験、商品購入が可能。

 ライブコマースはインタラクティブ性と顧客エンゲージメントの高さから世界的に注目を集めています。特に、ホスト役として圧倒的な影響力のある網紅の活用や、一般人でありながら影響力のあるマイクロインフルエンサーの活用が最近のトレンドとなっているようです。ライブコマースが先行する中国では、張大奕のような影響力の高い網紅を活用するため、大手ECプラットフォーム事業者が出店事業者に向けたクリエイター(インフルエンサー)とのマッチングプラットフォームを提供するほか、クリエイターの育成にも取り組みはじめています。例えば、アリババはクリエイターを養成する"達人学院"を設立するほか、ビューティーアシスタントを中心とする美容系インフルエンサーの養成所"美ONE"を後押ししています。日本ではライブコマースは始まったばかりですが、今後、試行錯誤のなかで日本独自のスタイルが確立されるでしょう。いずれ中国の張大奕のようにライブコマースで何億円も稼ぐホストも登場するかもしれませんね。ちなみに、1月末に実施されたme&starsのライブコマースでは、山田孝之さんの1日受付サービスの最終落札価格が約2,700万円となりました!👀次はどんな商品が販売されるのでしょうか?楽しみです。

(Ms Everyday Holiday)

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